ユーグレナは細胞内に脂肪酸あるいはワックスエステルを大量に貯蔵しますが、このうちワックスエステルはバイオディーゼルとして直接利用できます(文献4)。 さらに、より短鎖の脂肪酸は良い凝固特性と酸化安定性を持つため、ディーゼル及び灯油の工業生産では、長鎖脂肪酸より中鎖あるいは短鎖脂肪酸の利用が優先されます(文献5)。株式会社ユーグレナでは,ユーグレナ・ワックスエステル由来のFAME(脂肪酸メチルエステル:fatty acid methyl ester)を用いた従来型バイオディーゼル燃料(DeuSEL®)を、いすゞ自動車株式会社社員・来客用シャトルバス用に供給しており、試験的な2年間以上の実用化を実現しています。
筑波大学で開発されたサルファーインデックスによって、ミドリムシのワックスエステル発酵における臭いの発生が、硫黄化合物に関係する副次的反応によることがわかりました。サルファーインデックスにより、硫黄化合物についてメタボローム解析を行い、油脂の生産によって細胞内のシステインやメチオニンなどの含硫アミノ酸が増え、グルタチオンや硫黄を含むタンパク質などの化合物が減少していることが明らかになりました。さらに、ミドリムシによる油脂産生の際に、グルタチオンの分解を促進させる分子的原因を解析し、油脂生産の際にDug1p、Dug2p、Dug3pからなる分解経路の強化によりグルタチオンの分解が促進していることが示唆されました(文献6)。これらの結果は、油脂生産における臭いの発生を抑制する技術の開発につながると期待されます