みんなのミドリムシはどう解析される?-①培養-

各地でみなさんに採取し送っていただいたミドリムシ。微細藻類生産制御技術研究チームの研究室では、どのように解析されるのでしょうか。

手順は大きく4つで、①送っていただいたサンプルを培養して、②セルソーターを用いて単離し、③培養した各ミドリムシ候補についてDNA配列を読み、④読んだDNA配列を比較解析します。ここでは、①送っていただいたサンプルの培養についてご紹介します。

第一関門は、培養できるかどうか

私たちの研究チームは、世の中を変えるかもしれないミドリムシを探索及び作製しています。産業利用を目的とした新しいミドリムシは、最終的に大量培養ができることが理想的。例えば、図1は既に産業利用されているミドリムシのE. gracilisを培養する施設(石垣島)で直径は30m(文献1)、少なくともこれがいっぱいになるまで増殖できる能力が必要です。

ミドリムシの屋外培養
図1 E. gracilis培養施設(文献1より引用)

また、図1からもわかるように太陽光の利用や低コスト化を実現させるため、屋外で大量培養できることがベスト。ただ、屋外では図2のような目的外の微生物が増殖してしまう可能性が高くなります(コンタミネーション)。

図2 真菌のコンタミネーション例(文献1より改変)

この問題に対する解決策として、ミドリムシは増えることができても、他は増えることのできない条件で培養します。具体的には、酸性培地(培養に使用する液体)での培養です。真菌や乳酸菌はpH5-6、原核生物である大腸菌や放線菌はpH7-8の培地でよく増えます。対して、ミドリムシはpH3.5といった非常に酸性の培地でも増殖可能なのです(文献1)。

送っていただいたサンプルは、酸性培地で培養し、増えてきたものを少量とって新しい培地に移して再度培養、これを繰り返します。厳しい培養条件でも生き残ることができた「ミドリムシ候補」たちが第一関門突破です。

次の手順②では、培養した「ミドリムシ候補」たちをセルソーターという装置を用いて単離していきます。

参考文献

1) Suzuki K. (2017) Large-Scale Cultivation of Euglena. In: Schwartzbach S., Shigeoka S. (eds) Euglena: Biochemistry, Cell and Molecular Biology. Advances in Experimental Medicine and Biology, vol 979. Springer, Cham