みんなのミドリムシプロジェクト2019年度と2020年度で集まったサンプルのうち、ミドリムシありだったのは45サンプル。これらから89株のミドリムシ株を樹立しました。ここでは、これらの株がどのようなミドリムシなのか、DNA配列を解析した結果をご報告します(2021年3月末現在)。
今回読んだDNA配列は、16SのrDNA(葉緑体)とITS2配列(核)というものです。
解析する株の細胞が「ミドリムシの中でもE. gracilis種であるのか?」を16S rDNAの配列比較で確かめます。また、同じ種でもいくつかのサブグループに分かれます。そのサブグループを決める一つがITS2配列といわれています。ITS2配列は、核にあるリボソームRNAをコードするrDNAが並んでいる間に存在する配列です。※詳しい解説はこちら。
今回は、これらの配列を読むことで得られたE. gracilis株がどのようにグループ分けされるのかを調べました。
ミドリムシありだった45の水サンプルから、サンプル当たり1-6株を樹立し、得られた89株。その16S配列を調べてみると、すべての株は近縁のE.agilis種から離れ、E. gracilis種に属している様でした。ITS2配列に関しては、2019年度と2020年度で14種類のITS2配列が異なる株が存在していました。中でも、これまでに見つかっているE.gracilisのどのサブグループとも異なる配列、つまり新しい配列を持つ株が4株見つかりました(表1)。
表1 DNA配列解析の結果
ミドリムシあり | 樹立株 | ITS2配列が異なる株 | 新しい配列の株 | |
2019年度 | 14 | 13 | 5 | 1 |
2020年度 | 31 | 76 | 14 | 4 |
重複 | – | – | 5 | 1 |
合計 | 45 | 89 | 14 | 4 |
各水サンプルから樹立された株のうち、同じ水サンプル由来で同じITS2配列だったものを除いて、並べたものが図1の分子系統樹です。この系統樹では、それぞれの配列を持つサンプルがどれくらい近いのか遠いのか(配列が似ているのか違うのか)を知ることが出来ます。
※図1は、各枝の先に水サンプルの内容が書いてあります。Min19から始まるものは2019年度サンプル、それ以外は2020年度サンプルです。2020年度のものは、解析上の認識番号、DBのID、サンプル番号、採取都道府県の順に並んでいます。
みなさんにお送りいただいたサンプルから樹立したミドリムシ株は、これから細胞増殖および油やパラミロンなどの細胞成分を調べます。
新しいITS2配列をもつ株はもちろんですが、これまでのものと同じITS2配列をもつ株でも他のDNA部分が異なる可能性があるため解析の対象です。樹立した株の中からどんな新しいミドリムシが見つかるのでしょうか。少し時間はかかりますが、進捗をお楽しみに!